
ips細胞と歯の再生治療への期待
京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞して、ips細胞(人工多能性幹細胞)による再生医療にたくさんの期待と関心が高まっています。 ips細胞とは、「受精卵のように、体中のあらゆる細胞になれる能力を持つ」という意味で、2006年に山中教授が世界で初めて作製しました。
作製法を簡単に説明すると、「皮膚」や「歯の神経」に成長した大人の細胞を、いろいろな体の組織や臓器に成長できる「細胞の赤ちゃん」に初期化したということです。あらゆる可能性を秘めた画期的な成功なのです。
現在は、ips細胞をもとに病気の原因の解明や、薬の開発、細胞移植治療などの再生医療への活用を目指して研究がおこなわれています。
歯科では、今年の2月に東北大大学院歯学研究科の福本敏教授の研究グループが、世界で初めてips細胞から歯のエナメル質のもとになる細胞を作ることに成功したと発表しました。

人の歯は、エナメル質、象牙質、セメント質からできていています。歯の表面を覆うエナメル質は人の体の中で最も硬い組織で、栄養を体にとりこみやすくするために、食べ物をしっかり噛むという大切な役割をもっています。しかし、一旦、虫歯が進行して治療のために削ったり、事故で割れてしまったりしたら、再生することはできません。今は、金属の銀歯やセラミックなどのクラウン、詰め物で修復しています。
再生治療の研究が進んでいけば、いつかは失った歯が再生できる時代がくるかもしれません。
それまでは、しっかり歯磨きをして虫歯や歯周病を予防して、自分の歯をできるだけ長持ちさせましょう。
[参考]
京都大学 ips細胞研究所 「もっと知るips細胞」
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq2.html
東北大学プレスリリース 2012.2.10
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2012/02/press20120210-03.html
2012.12.18