
身元確認で大きな役割を果たす歯科医師

災害や事件で亡くなった人の身元がわからないときに、亡くなった人の歯型から身元確認を協力する歯科医師を警察歯科医といいます。人の歯は体の中で持っても硬くて丈夫な部分なため、生きているときの状態を残している場合が多いです。また、親知らずを含む32本の歯並びと顎の位置、歯の欠け、虫歯の治療痕などは一人ひとり違うので、指紋のように、個人と特定することができます。
歯型による身元確認が一般に知られるようになったきっかけは、1985年8月に起きた日航ジャンボ機墜落事故にさかのぼります。520人の尊い命が失われ、そのご遺体の身元を明らかにするため、地元の警察歯科医を中心に大勢のボランティアの歯科医が尽力し、法歯学、歯牙鑑定が広く認知され、全国各地で警察歯科医の組織ができました。
その後、1995年の阪神大震災、JR福知山線脱線事故、東日本大震災などの様々な事故、災害において、歯科医師による献身的な身元確認業務が行われてきました。
2011年の東日本大震災では、津波や火災によって歯科医院も大きな被害を受けて多くのカルテが失われ、身元確認が困難で長期化したという課題に直面しました。これを踏まえ、現在は、災害時の身元確認に活用するためにカルテのデータベース化や、有事の際に被災地での身元確認に迅速に対応できる人材の育成が進められています。
今日、災害での身元確認だけでなく事故や事件における身元確認、死因究明を望む社会の声が高まり、「死因究明推進法」、「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」が2012年に成立しました。これにより、法的にも「歯科医師による身元確認」が、はじめて明確に規定されることとなりました。
今後は、歯科医師による鑑定力強化と人材育成のため、大学のカリキュラムや歯科医師国家試験にも身元確認や死因究明に関する分野(法歯学)が取り入れられる予定です。 歯科医師の活躍の場がさらに広がっていくことが期待されますね。
2012.11.28