「昨日までズキズキしていた虫歯が、今日はまったく痛くない…」そのような経験はありませんか?
痛みが消えると「治ったのかも」と思いがちですが、実は虫歯がさらに深刻な段階に進行しているサインかもしれません。この記事では、虫歯の痛みが急に消える理由と、放置したときに起こるリスクについて、歯科医師監修のもと詳しく解説します。
この記事のポイント3つ
・歯が急に痛くなくなった場合、「痛みレベルの変化」「ストレスの減少」「歯の神経の死」が主な理由と考えられる。
・歯の神経が死ぬと、さらに虫歯が進行し、重篤な病気が起こり得る。
・痛みが急になくなった場合、虫歯とは別の原因も考えられる。
虫歯が急に痛くなくなった3つの理由
虫歯の痛みが急になくなる主な理由を具体的に紹介します。
①痛みのレベル【閾値(きいち)】が変化したから
痛みを感じる最小の強さを「疼痛閾値(痛覚閾値)」といいます。痛みを感じるレベルが低いと、わずかな刺激でも痛みを感じやすく、疼痛閾値が高いと、痛みを感じにくいです。
患者さんそれぞれで痛みのレベルに差があり、外的・内的要因によって変化しています。例えば、音楽を聞いている時は痛みを感じにくく、緊張が強いと痛みを感じやすくなります。
また、長期間強い痛みがあると、痛みに慣れて「最初ほど痛くない」と感じることも多いです。
②ストレスが少なくなったから
歯の痛みとストレスは密接に関係しています。虫歯がなくても、強いストレスで歯が痛くなることもあります。ストレスは顎関節症、歯周病などさまざまなお口の病気を発症・悪化させるとされてます。
急に歯の痛みがなくなったケースでは、体調が良くストレスが少ない結果、歯の痛みが軽減したとも考えられます。
③歯の神経(歯髄)が死んだから
虫歯は、歯の表面を覆うエナメル質が溶け、内側の象牙質・歯髄へと進行します。歯髄(しずい)は歯の神経や血管が集まった組織で、虫歯が歯髄にまで到達し、症状が出る状態を歯髄炎といいます。
歯髄炎は、熱いものや冷たいもので歯がしみ、何もしなくてもズキズキと痛んだりします。
強い痛みがある日急になくなった場合、歯髄炎が改善したのではなく、歯の神経が死んだと考えられます。神経が機能しないため痛みを感じなくなっただけで、虫歯は悪化しています。
神経が死んだ歯を放置した場合の4つのリスク
虫歯で神経の死んだ歯は、痛みを感じなくなっただけで虫歯はどんどん進行します。放置した場合、以下の新たな病気を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
①根尖性歯周炎になる
根尖性(こんせんせい)歯周炎とは、歯根の周囲の歯肉や歯槽骨(歯を支える骨)に炎症が起きる病気です。歯肉に腫れや痛みが生じ、歯槽骨が溶けた部分に膿が溜まることも多いです。
根尖性歯周炎の治療の最初の成功率は約70〜90%とされていますが、数年後に再発することもあります。再治療でも治らないケースもあります。
②上顎洞炎(じょうがくどうえん)になる
副鼻腔という空洞のうち、上顎の骨(頬の内側)に位置するのが上顎洞です。上顎の奥歯が虫歯になり、上顎洞に細菌が侵入すると上顎洞炎になります。お口や鼻からの膿の臭い、鼻づまり、頭痛などの症状が出たりします。
③顎骨骨髄炎(がくこつこつずいえん)になる
死んだ歯の神経から歯槽骨に細菌が感染していくと、顎骨骨髄炎が起こるリスクがあります。
頬や首の周囲が腫れ、発熱や寒気、嘔吐、倦怠感などの症状がみられます。口をあけるのが困難な場合もあり、虫歯治療だけでなく、感染した顎骨や軟組織の部分を外科手術で除去する必要もあります。
④心筋梗塞や脳卒中を引き起こす
虫歯が進行すると、、歯の根っこから血管を通って全身に細菌が運ばれる可能性があります。脳に虫歯菌が到達すれば、脳の血管を詰まらせて脳卒中を発症する恐れがあります。心臓なら心筋梗塞を引き起こすリスクもあります。
歯の神経が壊死している場合は根管治療が必要
根管治療は、根管(こんかん)という細くて複雑な歯の歯髄(神経や血管)の通る管をきれいにする処置です。虫歯の感染歯髄をすべて除去し、根管内の清掃・消毒をして、お薬を根管内に詰め、再発を防ぎます。
根管治療は精度の高い治療で、何度も通院が必要となることが多いです。
虫歯以外が痛みの原因になっている場合もある
急に歯の痛みがなくなった場合、痛みの原因が虫歯でない可能性もあります。
知覚過敏
知覚過敏は、冷たい、甘い、酸っぱい飲食物を摂取した時や、歯ブラシが歯に触れた時に歯がしみる症状が出ます。歯肉が下がったり、歯が破折(はせつ)して象牙質が露出することでも知覚過敏が起こります。
ズキズキとした痛みではなく鋭い痛みで、歯に物が当たってしみる場合、知覚過敏かもしれません。
歯周病
歯周病は、磨き残したプラークの中に潜む歯周病の原因菌が歯肉に入り込み、歯肉や歯槽骨に炎症が起こる病気です。多くの場合、痛みの自覚症状がないまま進行し、歯肉や歯槽骨を破壊し、歯を失っていきます。
ただし、歯肉の炎症が急激に生じ、強い痛みや腫れを伴うケースもあります。歯肉の赤みや腫れ、歯磨き時の出血、歯が揺れ動く場合、歯周病が疑われます。
歯ぎしり・食いしばり
寝ている間に歯ぎしり・食いしばりをする癖があると、歯の表面が擦れ合って徐々にすり減ってしまいます。象牙質が露出し、知覚過敏の症状が出ます。
歯ぎしり・食いしばりを放置すると、歯のひび割れ・欠けや、顎関節症など、歯やお口の痛みの原因となるさまざまな問題を引き起こすリスクが高まります。
起床時に顎の痛みやだるさを感じる場合には、歯ぎしり・食いしばりをしている可能性があります。歯科医院でのマウピースの治療を受けましょう。
まとめ
虫歯だと思っていた歯が急に痛くなくなった場合、痛みのレベルやストレスの上昇などが関係していると考えられます。
虫歯で歯の神経が死んだ場合、放置により根尖性歯周炎や上顎洞炎になることもあります。虫歯は自然に治らないため、痛みがなくなった場合も歯科医院を受診して治療しましょう。
この記事で「虫歯が急に痛くなくなったのはなぜ?」というあなたの疑問や不安が少しでも解消されたら幸いです。