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親知らず 抜歯 費用

親知らずの抜歯の平均費用はいくら?公的医療保険適用の条件や放置した場合のリスクも

監修者

古川 雄亮先生
古川 雄亮先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

「親知らずが生えていることに気づいたが、対処法がわからない。親知らずは抜歯したほうがいいと聞いたことがあるけれど、どのくらいの費用が必要?」そんな疑問をお持ちの方はいませんか。

今回、親知らずの抜歯時に必要な平均費用、公的医療保険の適用条件、抜歯時の金銭的負担の軽減方法、親知らずを抜歯したほうが良いケースと必要ないケース、親知らずの放置によるリスクを解説します。

記事のポイント3つ

・親知らず抜歯の平均費用は2,000〜10,000円程度。
・歯の状態(生え方など)によって抜歯難易度・費用は変動する。
・親知らずが真っすぐ生えて噛み合わせが良好、完全に埋まっていて問題がない場合は必ずしも抜歯が必要ではない。

親知らず抜歯は公的医療保険適用になる?治療費用は?

親知らずの抜歯は、虫歯や歯周病による痛みや腫れの症状がある場合や、将来的にトラブルが見込まれる場合、原則的に治療が必要になり、公的公的医療保険が適用されます。

抜歯費用は症例で異なりますが、自己負担額の目安は2,000〜10,000円程度です。親知らずの抜歯は、横向きに生えたり骨に埋まっていたりなど生え方により通常の抜歯に比べて難易度が高いことが多いです。それによって治療費も高額になります。

ただし、親知らずの抜歯は公的医療保険が適用されることが大半なので、患者さんの負担金額が軽減される点は頭に入れておくといいでしょう。

2025年8月 株式会社メディカルネット調べ

まっすぐ生えている場合|2,000~3,000円程度


親知らずの抜歯費用は、親知らずの生えている状態に伴う抜歯の難易度で大きく変化します。親知らずが真っすぐ生えている場合、抜歯難易度は低くなるため、治療費も比較的安価で済む傾向にあり、抜歯1本につき2,000〜3,000円程度でしょう。

2025年8月 株式会社メディカルネット調べ

横向きに生えている・顎の骨の中に埋まっている場合|2,000~5,000円程度


親知らずが横向きに生えている、顎の骨の中に埋まっている場合、抜歯時に歯肉の切開、顎骨の切除、歯の分割といった処置が必要になります。抜歯の際に必要となる治療費は抜歯難易度によって異なるため、親知らずが複雑な状態で生えている患者さんの場合、親知らずの抜歯費用も高額になりやすいです。

抜歯する親知らず1本につき、2,000〜5,000円程度の費用が目安となります。加えて、難易度の高い抜歯に備えてCT撮影等の検査により親知らずの状態を確認することが必要になり、その場合は3,500円程度が追加で必要になります。

2025年8月 株式会社メディカルネット調べ

親知らず 抜歯 費用

親知らず抜歯が公的医療保険適用になるための条件とは?

親知らずを抜歯する際に公的医療保険を適用できるか否かは、条件を満たせるかによって左右されます。

具体的には、親知らずの抜歯が医療的に必要である(親知らずが歯茎に埋まっている状態で炎症がある、親知らずが他の歯を押して痛みの原因となっているなどの)場合、保険治療を受けることが可能でしょう。

非常に稀ですが、親知らずの抜歯理由が審美面の改善である場合、公的医療保険の適用外となる可能性が高い点には注意が必要です。


親知らず抜歯にかかる費用を安くする方法とは?

親知らず抜歯での金銭的負担を軽減できるケースがあります。親知らず抜歯で利用できる具体的な軽減方法は以下の2つがあります。

医療費控除を利用する


医療費控除とは、1年間で支払った医療費の自己負担額が一定の値を超えている際に、確定申告の際に申請を行うことで、還付を受けることができるようになる制度です。

原則1年間の医療費が10万円を超えた場合は医療費控除を受けることが可能になるため、条件を満たしているのであれば、医療費控除を利用することで治療に伴う金銭的な負担を軽減できます。

ただし、医療費控除を受ける際には、医療費控除の明細書や医療費の領収書を保管する義務があることを忘れないようにしましょう。

高額療養費制度を利用する


高額療養費制度は、1ヵ月で支払った医療費が限度額を上回った場合、超過分の金額を支給してもらえる制度です。限度額は患者さんの年齢や所得によって変化し、70歳以上の患者さんや所得が少ない患者さんの場合は負担を軽減してもらえる制度も存在します。

高額療養費制度を利用するためには、「高額療養費支給申請書」という書類を提出したうえで、審査を受ける必要があります。そのため、高額療養費制度の利用を検討している場合は、申請書の印刷方法ならびに記入方法について、事前によく調べておくとよいでしょう。

*上記、紹介した2つの金銭的負担軽減方法は親知らずの抜歯だけでは適応されないことが大半です。

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そもそも親知らずは抜歯した方が良いの?

親知らずがあっても、場合によっては抜歯する必要がないこともあります。親知らずを抜歯したほうが良い4つのケースと、必ずしも親知らずを抜歯する必要がない5つのケースを詳しく解説します。

親知らずを抜歯した方が良い4つのケース

生えている親知らずの状態によっては、親知らずの抜歯が患者さんにとってプラスになります。親知らずを抜いたほうが良いと考えられる具体的な例は、以下のような4つのケースがあります。

→親知らずを抜歯する最適なタイミングについては「親知らずはいつ抜くのがいい?抜いた方がいい人&抜かなくてもいい人も」の記事をご覧ください。

①親知らずや手前の奥歯が虫歯になっている


親知らずは歯列の一奥番に位置するため、虫歯になってしまった場合、削って詰めるような治療そのものが難しくなります。治療が成功しても再び虫歯が発生する可能性があるため、虫歯治療よりも抜歯したほうが良いことも多いです。また、親知らずの手前にある第二大臼歯という奥歯が虫歯になった場合、親知らずを抜いて治療することは多いです。

②横向きに埋まっていて前の歯に悪影響を及ぼしている


親知らずが横向きの状態で埋まっている場合、親知らずの手前にある第二大臼歯に悪影響を与える可能性があります。第二大臼歯の歯根吸収を引き起こしたり、歯周病の発生原因となることが懸念されるため、親知らずの抜歯によって、これらのリスクを未然に防げる可能性が高まります。

③常に食べ物が詰まる・歯茎の腫れや痛みを繰り返している


親知らずの中には、歯の一部だけが歯肉から顔を出しているような生え方のケースもあります。そのような場合、食事の際に食べ物が詰まりやすくなって細菌が繁殖し、親知らずの周りの歯肉炎で腫れや痛みが出るかもしれません。そうした事態を避けるために親知らずの抜歯は効果的です。

④レントゲン検査で袋のような影が見られる


親知らずが完全に骨の中に埋まっている場合、エックス線などを利用して写真撮影し、袋のような影が歯の周囲に見られることがあります。「嚢胞」という出来物でで、放置により顎の中の神経が圧迫され、痛みや腫れが生じます。このケースでは、病気の進行前に親知らずを抜歯することが重要です。

親知らずを抜歯しなくても良い5つのケース

親知らずの中には、抜歯の必要性が低いものや、抜歯しないことによって患者さんが恩恵を受けられることがあります。この項目で紹介する5つのケースに当てはまるなら、親知らずを抜歯しなくても良いかもしれません。

①親知らずが上下きちんと生えていて噛み合っている


親知らずが上下どちらも真っ直ぐ生え、お互いにしっかり噛み合っているケースです。問題なく機能している親知らずは、必ずしも抜歯する必要はないでしょう。

②顎の骨の中に完全に埋まっていて特に問題が見られない


親知らずが顎の骨の中に完全に埋まって特に問題もない場合、周囲の歯や骨への悪影響の可能性は低いと考えられます。痛みや腫れなどの症状もないなら、抜歯のする必要はないでしょう。

③入れ歯やブリッジの土台として必要


親知らず周囲の第一大臼歯や第二大臼歯を失ってしまった場合、親知らずの部分に入れ歯の装着に必要なバネをかけたり、親知らずを削ってブリッジの土台にすることによって、歯を失った部分を補うことも可能ですになります。真っすぐ生えている親知らずはこれらの目的のために抜歯せず残しておく選択肢もあります。

④移植して他の歯の代わりにする


親知らずよりも手前の歯を抜歯する必要が出てきた際、歯を失った部分に親知らずを移植することもできます。親知らずを別の場所に移植できるかは、親知らずの形や大きさ、移植部位が問題ないかなどに左右されま。

⑤矯正治療で正しい位置に動かせる


親知らずが正しい位置に生えてなくても、矯正治療で正しい位置に親知らずを動かし、上下の歯が正しく噛み合う状態に持っていくことができます。

このような場合、抜歯よりも矯正治療で親知らずを動かして保存したほうが、患者さんにとって良い結果となることもあります。

親知らずを抜歯せずに放置した場合の3つのリスク

親知らずを抜歯せず放置した場合、お口の中に何らかの悪影響が出る可能性を考慮しなくてはなりません。親知らずを抜歯しないことによるリスクは、主に下記の3種類です。

①虫歯になりやすくなる


親知らずは歯並びの一番奥に位置するため、歯磨きしにくいです。さらに、親知らずの生え方が真っ直ぐでないと周囲に食べカスが溜まりやすくなるため、細菌の繁殖を招きます。これらの理由から、親知らずによって、虫歯や歯周病の発症リスクは高くなります。

②智歯周囲炎(ちししゅういえん)になる恐れがある


智歯周囲炎とは、細菌が原因で発生する、親知らず周囲の歯肉など歯周組織における炎症です。親知らず周囲を清潔に保つのが難しい点が主な原因となっており、親知らずの周囲の歯肉に腫れや痛みが出たり、出血や膿が生じることに加え、症状の進行に伴って頬や首まで腫れたり、お口が開けにくくなる場合もあるため、注意が必要です。

③歯並びが悪くなる原因になる場合がある


親知らずが生えてくることによって、親知らずの手前に位置する第二大臼歯(だいにだいきゅうし)が後ろから押され、歯並びが悪くなる可能性(諸説)があります。また、親知らずが虫歯や歯周病のリスクを高めることにより、それらの病気によって他の奥歯がなくなったりして歯並びが悪化するケースもあるため、綺麗な歯並びを維持したい人は気をつけたほうがよいでしょう。

まとめ

親知らずの抜歯費用の平均は、2,000〜10,000円程度とされています。親知らずの抜歯は歯の形態や位置、生え方などにによって費用が異なる点に注意が必要です。

親知らずは抜歯した方が良いケースと、抜歯しなくても良いケースがあります。親知らず周囲において痛みなどの異常を感じている場合、早急な対処が必要な可能性もあるため、早めに歯科医院に足を運んで医師に相談し、治療を受けることをおすすめします。

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