高齢の親御さんの身体が加齢で衰え心配になってくる一つに、「口腔ケア」があります。健康状態によっては、自分で歯磨きするのが難しくなったり、しゃべる機会が少なくなったりし、全身やお口の健康面・機能面に支障が出るおそれがあります。全身を含めたお口のトラブルを予防するために行うのが、口腔ケアです。
この記事では、高齢者にとっての口腔ケアの重要性、その効果、実際のケア手順、注意点までを詳しく解説します。
記事のポイント3つ
・口腔ケアは虫歯・歯周病、誤嚥性肺炎、認知症などの予防効果が期待できる
・うがい、入れ歯の清掃、歯磨き、舌の清掃の手順でケアをする
・本人の身体能力を活かし、短時間で無理なく行うことが大切
まずは高齢者の口腔ケアの大切さと必要性を理解しよう
「食べる」行為はエネルギー(栄養)を取るだけでなく、美味しく味わいお腹いっぱいになる満足感を得ることにもつながります。歯が抜けてしっかり食べられなくなると、食べることが苦痛になり、気力や体力の低下につながるかもしれません。
歯が抜けて食事出来ないことで脳の機能が低下し、転倒しやすくなるなどの問題が起き、外出して身体を動かすのもおっくうになっていきます。口腔ケアによって、歯の喪失を予防し、お口の機能を低下させず、高齢者が閉じこもるのを防ぎ、健康面・心理面での質を向上させられます。
口腔ケアとは?
口腔ケアは、口腔の中の衛生環境の改善と機能の向上という2つの目的があります。
①器質的口腔ケア
口腔の中を清潔にするケアです。ご自宅で行う歯磨きも器質的口腔ケアですが、高齢になるとうまくできなくなる方が増えてきます。
認知症や脳梗塞などの全身疾患を発症すると歯磨きの質が低下し、加齢やお薬などで口腔乾燥が起こりやすいことが原因で口腔の衛生環境が悪化します。
②機能的口腔ケア
頬・唇・舌などの口腔周りの筋肉を動かしマッサージをして、食べたり話したりする機能を向上させるケアです。口腔機能は加齢で低下する傾向にありますが、口腔トレーニングで食事やおしゃべりの楽しみを維持します。
高齢者に口腔ケアを行うことで期待できる効果は4つ
口腔ケアの継続で、健康・機能面で次のメリットがあると考えられます。
①虫歯や歯周病などを予防する
高齢や病気で身体機能が低下すると歯磨きが不十分になり、口腔環境が不衛生になりがちです。細菌が溜まりやすく、虫歯や歯周病の温床になります。虫歯や歯周病は歯が抜ける原因となるため、予防が肝心です。口腔ケアによって衛生環境を改善すると細菌数が減り、虫歯や歯周病を防げます。
②誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの感染を防ぐ
高齢になると誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。これは、食道や胃の逆流物や唾液が誤って気管に入って、その中の細菌が起こす肺炎のことです。口腔ケアによって飲み込む機能が改善し、気管に入ったものを吐き出す(むせる)力が向上すると、誤嚥性肺炎防止になります。また、口腔内の細菌も減少して肺炎の可能性を軽減します。
③口腔機能を維持する
噛む、しゃべる、むせるといった口腔機能の低下を防ぐ役割があります。口腔内を清潔にして機能回復トレーニングをすることで、生活の質を向上させます。
④認知症を予防する
高齢でも歯が多く残っている方は、認知症になりにくいと言われています。口腔ケアで虫歯や歯周病を防いで歯の健康を守ることで、肉や魚をしっかり噛め、脳の老化を予防します。軽度認知障害から認知症進行を遅らせられるとも考えられています。
高齢者の口腔ケアを行う前に知っておきたい4つのポイント
高齢者の口腔ケアをする方も快適に進めるために知っておきたいポイントを紹介します。
①今ある能力を最大限に使うために極力本人にやってもらう
高齢者の口腔ケアで大切なのが、できるだけ本人にやってもらうことです。ご自身で歯磨きをしうがいすることで、モチベーションや積極性が高まり、手を動かすことがリハビリにもなります。
今持っている能力を最大限に使うことが重要です。周りからは、使いやすい歯ブラシや歯間ブラシを選ぶなどサポートし、歯磨きの最終チェックなどもしてあげるとよいでしょう。
②負担になりすぎないように短時間で済ませる
ご本人での口腔ケアの実践で重要なのが、短時間で済ませることです。高齢者は口腔の中が乾燥しやすく、ケアが長引くと負担になります。あまり長いと不快感にも思うでしょう。手際よく口腔ケアを行い、快適に続けられるようにします。
③誤嚥(ごえん)しないように姿勢に気を付ける
口腔ケアで心配なのは誤嚥です。うがいの水や唾液でも誤嚥するリスクがあり、誤嚥性肺炎につながるおそれがあります。高齢者の顎をしっかり支えて傾けるなど姿勢に気を付け、誤って飲み込まないように気をつけましょう。ケア中は声をかける、休憩を取る、または水分補給を促すことも誤嚥を防ぐことにつながります。
④トラブルを早期発見するために口腔内を確認しながら行う
ケアをする際に口腔の中を良くチェックしましょう。歯の噛み合わせ、虫歯の有無のほか、歯肉・頬・舌などの粘膜状態、口臭の有無を確認しておくと、トラブルの早期発見につながります。異常を見逃さないことが大切です。
【種類別】高齢者の口腔ケアを行うときの手順
口腔ケアは、次の段階を踏むことでより清潔に行えます。
①うがい
左右の頬をしっかり動かす「ぶくぶくうがい」をします。食べ物の残りかすを流し、頬や唇の運動にもなります。また、口腔内を事前にある程度清潔にしてから歯磨きを行えます。
②入れ歯の清掃
外した入れ歯を磨きます。入れ歯は落とすと割れることがあるので注意し、まずは水できれいに掃除します。基本は入れ歯用のブラシで磨き、週1〜2回くらいの頻度で入れ歯洗浄剤を使います。人工歯の付け根や入れ歯の裏側、バネ(クラスプ)の部分は汚れやすいので、汚れの付着をよく見て磨きます。
③歯磨き
歯の表面に付着している歯垢を取り除くことが目的です。毛先の部分を歯の面に直角に当て、軽い力で横に小刻みに動かします。歯と歯の間、歯と歯肉の境目、奥歯の溝が特に汚れやすいため、丁寧に磨くように意識します。介助するときは、空いている方の手で顎が動かないように固定したり、頬を外側に引っ張りして磨きましょう。
④舌の清掃
加齢や病気によって舌を動かす力が弱くなると、舌の汚れが付着しやすくなります。舌ブラシや軟らかい歯ブラシを使い、奥から手前に向けてやさしくこすります。10回ほどが適度な回数です。
⑤口腔清拭
口腔内の傷などによって洗口できない場合、スポンジブラシやガーゼなどで口腔の中を優しく拭き取ります。誤嚥を防ぐために奥から手前に向けて拭きます。舌も拭き取ることで、口臭予防になります。ガーゼなどに染み込ませる液体ですが、デンタルリンスを使うとより爽快感を得られます。
まとめ
口腔ケアは、口腔内を清潔にし機能を向上させるケアです。口腔内をきれいにして細菌を減らす器質的口腔ケアと、口腔周りのトレーニングをして噛んで飲み込む、しゃべるといった機能を回復させる機能的口腔ケアの2種類があります。
虫歯・歯周病・認知症などの進行予防や誤嚥性肺炎発症の予防などが期待できます。ご自宅で近親者とご本人で取り組むとともに、歯科医院での専門的ケアを受けましょう。