歯に痛みを感じているが、忙しくてなかなか歯医者を受診できずにいる。我慢できなくなってきたので痛み止めを飲んだのに改善される気配がないけれど、痛み止めが歯の痛みに効かないことってあるの? そんな疑問をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
歯に痛みが生じている原因によっては、痛み止めを服用しても効果がないケースがあります。今回は、歯の痛みに対して痛み止めが効かない7つの原因と、痛み止めが効かない時に歯の痛みを和らげるための3つの対処法について、それぞれ詳しく紹介していきます。
この記事の要約
・虫歯が神経に到達している、歯根の先に膿が溜まっている、歯が割れて神経が刺激を受けている、歯周病の急性発作、智歯周囲炎、被せ物の高さの不一致、歯以外に起因する歯の痛み等が原因となっている場合、痛み止めを服用しても歯の痛みに対処できない
・痛み止めが効かない場合は、お口の中を清潔にする、外側から患部を冷やす、手のツボを押すといった手段を取ることで、歯の痛みを和らげられる可能性がある
・歯が痛む原因とその対処法は多岐にわたるため、可能な限り早く歯科医院を受診して原因を特定し、適切な対処によって抜本的な改善を図ることが何よりも大切になる
歯の痛みに痛み止めが効かない7つの原因
歯の痛みが発生している原因によっては、痛み止めが効果を発揮しないケースがあります。この項目では、痛み止めが効かないタイプの歯の痛みの具体例について、大きく7つの種類に分けて詳細に解説していきます。
原因①虫歯が神経まで到達している
虫歯が歯の神経まで到達している場合は、神経の部分において強い炎症が発生したり、神経が死んでしまう可能性があります。とりわけ、歯髄と呼ばれる部分で炎症が起こる「歯髄炎」という症状は、かなりの痛みを伴うこともあって大きな注意が必要となります。
虫歯がこの段階まで進行すると、市販の痛み止めを服用してもさほど効果がなく、痛みが消えないという事態に陥ってしまうことも多いです。放置していると抜歯が必要になる可能性もあるため、可能な限り早いタイミングで歯科医院に足を運び、治療を受けることをおすすめします。
原因②歯の根っこの先に膿が溜まっている
虫歯などの影響で歯の神経にあたる部分に炎症が発生している状態を放置していると、神経が死んで「歯髄壊死(しずいえし)」と呼ばれる状態になります。その後は壊死した神経が腐敗して、歯根の周辺にあたる部分まで細菌の感染が広がっていき、やがては歯根の先端の部分に膿が溜まることになります。
歯の根っこの先に膿が溜まった状態になると、激しい痛みが持続するようになります。症状が進むと、歯を噛み合わせたり、歯に対する軽い接触が起こっただけで痛みが強くなり、最終的には痛みを感じる箇所が顎の骨にまで広がっていくため、市販の痛み止めだけで症状に対処することが難しくなってしまいます。
原因③歯が割れている
歯が割れたり、折れたりした際に歯根の部分まで破損が及んでしまうと、直接歯の神経が刺激されることになってしまいます。歯根の部分には神経や血管が多く存在するため、その部分が直接衝撃を受けると、極めて激しい痛みが発生することになります。
このような状態に陥ると、痛み止めによる対処は非常に困難となります。最終的には抜歯することを余儀なくされるケースが大半になるため、早急に歯科医院における診察を受けたうえで、専門医の判断に基づく適切な処置を施してもらわなくてはなりません。
原因④歯周病の急性発作が起こっている
歯周病の影響で痛みが生じるケースは基本的に少ないですが、風邪などの影響で体調が悪化していたり、疲労がたまっていたりするタイミングにおいては、急に歯茎が腫れて痛みが発生することがあります。
この現象は細菌感染によって引き起こされるものであり、対処するためには抗菌剤を用いて炎症を抑える必要があります。痛みがあるからといって、通常の痛み止めを服用したとしても効果がないため、歯周病に罹患している状態で痛みが発生した場合は、歯科医院に足を運んで専門医の診察を受け、自身の症状を適切に把握することが大切になります。
原因⑤智歯周囲炎(ちししゅういえん)になっている
「智歯周囲炎」とは、親知らずの部分に発生している炎症のことです。親知らずやその周囲の歯茎が細菌感染を起こすことによって引き起こされる現象であり、親知らずが歯磨きの際にブラッシングしづらい箇所に生じやすいことから、付着した汚れが除去されにくいという特性もあって、大きな注意が必要な症状となっています。
智歯周囲炎の症状を抑えるためには細菌感染への対処が求められるため、通常の痛み止めでは効果がありません。まずは抗菌剤を投与することになりますが、それだけで状況が改善しない場合は、洗浄や消毒を行ったり、切開して膿を出す必要が生じることになります。
原因⑥被せ物の高さが合っていない
お口の中に新しく被せ物を入れた際に、その部分が他の歯よりも高くなってしまうことがあります。その状態のまま日常生活を送っていると、ものを噛んだ時に生じる刺激がその部分に集中してしまい、被せ物をしている歯に対して痛みが生じるようになってしまいます。
この症状に対処するためには、歯科医院に足を運んで処置を受け、被せ物の高さを適切な状態に整えることが必要です。痛み止めを服用するだけでは抜本的な対策にはならないため、被せ物の高さに違和感を感じている場合は、早めに担当医の診察を受けて歯列の状態を改善してもらうことをおすすめします。
原因⑦歯以外に原因がある
歯に痛みが生じている原因が歯以外の部分にある症状のことを、「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」と呼びます。具体的には、ものを噛む際に使う「咀嚼筋(そしゃくきん)」と呼ばれる筋の痛みによる歯痛、神経に何らかの障害が発生したことによる痛み、片頭痛による痛み、狭心症や心筋梗塞などの影響で生じる歯痛、うつ病などによる心因性の歯痛といった、多岐にわたる症状が存在します。
これらの症状に対してはそれぞれの原因に応じた処置が必要となるため、痛み止めを含めた一般的に行われる歯の治療では改善が見込めません。原因を正しく認識できずに歯を削ったりすると取り返しがつかない事態となるため、症状を的確に見極めることが求められます。
歯の痛みに痛み止めが効かないときの3つの対処法
歯の痛みに対して痛み止めが効果を発揮しない場合であっても、それ以外のアプローチを取ることによって、歯の痛みを和らげることができるかもしれません。痛み止めが効かない時に頼ることができる対処法の一例としては、以下に挙げる3つの手段が挙げられます。
①お口の中を清潔に保つ
歯の痛みの中には、食べ物の塊が歯に詰まって神経を圧迫していることによって発生しているものや、虫歯などの影響で歯に空いた穴に食べ物が詰まることで発生するものが存在します。そのため、歯磨きなどによってお口の中を綺麗にすることができれば、歯の痛みを解消できる可能性があります。
歯が痛い時は歯磨きをすること自体に痛みが伴いますが、できる限り優しくブラッシングすることで刺激を避けることができます。どうしても歯磨きが難しい場合は、ぬるま湯を使用してうがいを行い、可能な限りお口の中の衛生状態を清潔に保てるようにしていきましょう。
②外側から患部を冷やす
炎症によって発生している歯の痛みは、血管の拡張によって血流が勢いを増し、神経が圧迫されることによって引き起こされています。そのため、患部を冷やすことによって血流が抑えられ、歯の痛みを和らげることが可能になるケースがあります。
その際には、痛みのある歯を直接冷やしてしまうとむしろ痛みが増す危険があるため、お口の外側、頬の上から濡れたタオルや保冷材などで患部を冷やすとよいでしょう。ただし、過度に冷やすと血流が悪化しすぎて再び痛みが生じる可能性が出てきたり、症状によっては冷やすと逆効果になるケースも存在するため、状況を確認しながら冷やすようにしましょう。
③ツボを押す
歯の痛みに効くツボを押すことによって、症状を和らげることができる可能性もあります。具体的には、「合谷(ごうこく)」と呼ばれる、手の甲の親指と人差し指の付け根の部分に存在するツボを、反対側の手の親指と人差し指を使って挟むように押して刺激することで、歯の痛みを和らげることができるようになるかもしれません。
ツボの刺激は、急に歯が痛くなったものの、かかりつけの歯医者がちょうど休みの日だった時のような、応急処置が必要な際に効果的な手段となり得ます。ただし、弱い痛みに対しては有効になる可能性があるものの、痛みが激しい場合はツボを押すだけでは完全な対処が難しい点には留意しましょう。
まとめ
歯の痛みに対して痛み止めが効かない場合は、虫歯が神経まで到達している、歯の根っこの先に膿が溜まっている、歯が割れていること等が原因として考えられます。その際には、口の中を清潔にする、外側から患部を冷やす、手のツボを押すといった手段を取ることによって、歯の痛みを和らげることができるかもしれません。
ただし、これらの対処法はいずれも痛みを根本的に解決するものではありません。そのため、早めに歯科医院を受診して原因を特定し、適切な対処によって抜本的な改善を図ることが何よりも大切である、ということを忘れないようにしておきましょう。