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歯医者の初診でクリーニングだけ受けるのは無理?頻度や費用の目安も

監修者

古川 雄亮先生
古川 雄亮先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

結論、歯医者の初診でクリーニングだけを受けることは難しいです。今回はその理由に加え、クリーニングによる3つのメリット、クリーニング前の4つの検査と開始後の具体的な内容、クリーニングを受ける頻度や必要な費用を紹介します。

この記事の要約

・初診(保険診療)でクリーニングだけを受けることは基本的に難しい。
・歯医者でクリーニングを受けることで、虫歯や歯周病の発生を予防したり、お口の中を清潔に保ち、問題が発生した時にいち早く気づくことができる。
・歯医者でクリーニングを受ける頻度は短ければ1~3カ月に一度、長ければ1年に一度のペースとなる。

歯医者の初診でクリーニングだけ受けるのは難しい理由

公的医療保険適用の診療で歯のクリーニングを受けたい場合、歯科治療の一環としてクリーニングが行われます。

歯科医院での歯茎の検査によって歯周病という診断が下されていなければ、公的医療保険を適用したうえでクリーニングを受けることはできなくなります。

なぜなら、医療保険は何らかの疾患に対する治療行為に対して適用でき、汚れを取る行為であるクリーニング単体では要件を満たさないからです。歯周病と認定されるためには、検査やレントゲン撮影によってお口の中の状態を確認することが基本的に必須です。

検査やレントゲンは必要なくクリーニングだけを行ってほしい、と考える患者さんがいます。保険適用の上で治療を受けたいのであれば、歯周病であるという診断を受ける必要があります。

*患者都合で検査が難しく、視診で歯茎が腫れているなどがみられる場合、クリーニングが可能になることがあります。

歯医者でクリーニングを受けるメリット

歯医者で専門的なクリーニングを受け、患者さん自身のセルフケアだけでは取りきれない汚れを除去します。
この項目では、歯医者でクリーニングを受けることによる3つのメリットを詳しく解説します。

虫歯や歯周病の予防につながる


歯医者でクリーニングを受けることによって、虫歯や歯周病の予防につながります。歯科医院での専門的な歯のクリーニングは、お口の中にあるセルフケアで取れにくい汚れや歯垢、歯磨きだけでは落ちない歯石の除去も行われます。

歯垢や歯石を取り除くことで虫歯や歯周病の原因となる細菌の繁殖を防ぎ、ブラッシングで除去しきれなかった汚れを除去できるため、虫歯や歯周病が発生するリスクを未然に防ぐことにつながります。

口腔内の問題を早く見つけられる


定期的に歯科医院を訪れて歯のクリーニングを受け、お口の中に問題が生じた際、いち早く気づくことができる点もポイントです。

歯や歯肉が健康に見える状態でも問題が発生しているケースもあるため、専門医に定期的に状態を判断してもらうことはとても重要です。

虫歯や歯周病をはじめとするお口の中の異常を初期に発見できれば、治療にかかる期間や、患者さんの負担も小さく済みます。クリーニングはお口の中の衛生状態を改善するだけでなく、今後生じ得るリスク回避にもつながります。

口腔内を清潔に保てる


着色しやすい飲食物の摂取やタバコ(喫煙)などの生活習慣の影響によって、歯や歯茎が変色することがあります。クリーニングを受け、歯の着色する原因となった汚れを除去し、歯や歯茎の色を健康な状態に近づけることもできます。

また、口臭の原因となる物質が付着しやすい舌をクリーニングすると、口臭の発生も抑えられます。定期的にクリーニングを受けることによって、歯・歯茎・舌の健康や機能を維持し、お口の中の衛生状態を清潔に保ちます。

歯医者 クリーニング

クリーニング前に行う検査の内容

歯医者でクリーニングを受ける前に、お口のの検査を受けるのが、患者さんの状態を正確に把握するために重要です。必要な検査は、以下の4つです。

レントゲン検査


歯を支える骨の状態を確認するため、レントゲン写真を撮影します。歯周病になると歯を支えている部分の骨が溶け、進行して歯が抜ける可能性もあるので、治療前に歯周病の進行状況や骨の状態を把握できるレントゲン検査によって、お口の中の見えない箇所の状況を確認します。

歯周ポケットの検査


主に、歯周病によって、歯と歯茎の間に生じる隙間のことを「歯周ポケット」と呼びます。歯周ポケットの深さが4mm以上の場合は、歯周病の進行が予想されます。「プロープ」と呼ばれる専用の器具を使用して歯周ポケットの深さが測定されます。

参考:アイ歯科



歯茎の出血検査


炎症部分に出血がみられることが多いため、出血の有無によって歯周病の状態を確認し、炎症が起こっている箇所を特定することが可能です。歯を磨いたり、歯間ブラシを使用した際に歯茎から出血する場合は歯周病の進行が懸念されるため、クリーニングが必要です。

歯の動揺度検査


歯周病の症状が進行し歯が大きく揺れる場合、歯を支える骨や、歯茎など周囲組織が炎症を起こしている可能性があります。

放置していると歯が抜け落ちてしまうかもしれないため、歯の揺れの大きさを確認することによって、歯周病の進行状況を把握することは重要です。

歯医者で行うクリーニングの内容(保険診療)

歯医者のクリーニングには行程があり、処置が段階に応じて異なります。歯医者におけるクリーニングの中で特に重要なポイントは3つです。

①歯石・歯垢除去


お口の中の状態を確認した時に、歯周病の原因となる歯垢(プラーク)や歯石が見つかった場合、クリーニングによって除去する必要が出てきます。また、歯垢も虫歯や歯周病の大きな原因となるため、歯石と同様に特定の器具を使って除去し、お口の中の衛生状態の悪化を防ぎます。

②スケーリング


スケーリングとは、主に歯茎よりも上の部分にある歯石や歯垢(バイオフィルムと呼ばれる細菌の塊)を除去することです。スケーリングでは「スケーラー」という器具を用いて、歯の表面に付着した歯垢や歯石をガリガリと削って除去します。

患者さんのお口の中の状況に応じ、使用するスケーラーの種類は変わります。

③SRP(スケーリング・ルートプレーニング)


SRP(スケーリング・ルートプレーニング)では、主に歯茎の下の部分(歯周ポケット)にある歯石や歯垢を除去します。歯周病の原因となる細菌のいる歯石や歯垢が増えると、歯周病が気づかずに進行し、歯の動揺や喪失につながる可能性があるため、歯周ポケット内の歯石や歯垢を除去することは非常に重要です。

④歯面清掃・研磨(PMTC)


歯面清掃・研磨は「PMTC」とも呼ばれ、患者さん自身の歯ブラシのケアでは届かない部分の汚れを落とします。

歯面に研磨剤を塗り、歯科器具の先端に小さなブラシを取り付け、細かい着色や歯垢を落とし、最後にフッ素を塗布することによって、歯を強くしつつ虫歯や歯周病を予防します。

ブラッシング指導


患者さんによる歯磨きのセルフケアの質を高めるために、歯科医・歯科衛生士によるブラッシング指導も行われます。
歯に当てる歯ブラシの角度や動かし方(ブラッシングの基礎)、歯と歯の間にある隙間の汚れを落とす上で効果的な歯間ブラシやデンタルフロスの使い方などを教えてもらえます。

歯医者でクリーニングを受ける頻度

歯医者でクリーニングを受ける頻度は、患者さんのお口の中の状態次第です。お口の中の状態が悪かったり、歯並びの悪さによってブラッシングが難しい場合など、1~3カ月に一度のペースでクリーニングを受けることが望ましいとされています。平均的には3ヶ月の設定が多いです。

ただし、お口の中の健康状態が良く、歯周炎などの症状が比較的軽微な患者さんの場合、6カ月~1年に一度クリーニングを受けて問題ないと判断されることがあります。自分のお口の中の状態を担当医に確認してもらったうえで、決められた頻度で通院しましょう。

歯医者でのクリーニングにかかる費用

歯医者でクリーニングを受ける際には、施術内容や目的によって保険が適用されるか否かが変わります。公的医療保険が適用されるか、自由診療となるかによって患者さんの金銭的負担も大きく変化するため、治療前に確認しておくとよいでしょう。

費用の相場としては、公的医療保険が適用される場合、初診で3,000~4,000円、2回目以降の受診では1,500〜2,000円程度です。自由診療の場合は5,000〜10,000円と金額設定が大きく異なるため、公的医療保険が適用されるか否かは、患者さんには重要なポイントです。

2025年3月 株式会社メディカルネット調べ

まとめ

歯医者を初めて受診する際に、検査なく公的医療保険適用でクリーニングだけをしてもらうのは難しいです。保険診療での歯のクリーニングは治療の一環であり、検査を受けて歯周病という診断が必要だからです。

クリーニングの頻度については、お口の中が健康な状態であれば、3ヶ月に1回程度が多いです。歯のクリーニングは虫歯や歯周病予防や早期発見につながるため、治療を受ける際には、定期的にクリーニングを受けることで、お口の中の衛生状態を良好に保ちましょう。

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