「昔から口内炎ができやすくて困っており、歯科医院での口内炎のレーザー治療に興味がある。」そんな悩みや考えの方は多いです。歯医者におけるレーザー治療は口内炎のみならず、さまざまな用途で利用されています。
今回、口内炎の5つの原因、口内炎にレーザー治療の有効性、レーザー治療の料金、レーザー治療が使われる口内炎以外の5つの処置を紹介します。
この記事の要約
・口内炎の原因には、お口の中の傷、過労やストレス、栄養バランスの偏り、栄養バランスの悪化、患者さんの体質などがある。
・レーザー治療は口内炎の治療に効果的な手法の一つである。
・レーザー治療は口内炎のみならず、虫歯治療、歯周病治療といった、幅広い役割で利用されている。
口内炎とは?
口内炎とは、舌、唇、歯肉、喉の奥など、お口の粘膜に発生する炎症を指します。痛みの影響で会話や食事に支障が出るだけでなく、症状や発症している期間によっては、危険な疾患の兆候を示すケースもあります。
口内炎が発症する要因は複数あり、発症の原因によって分類が変わります。主な種類として、ストレスやビタミン不足が原因と考えられている「アフタ性口内炎」、口腔内の傷に細菌が繁殖して発症する「カタル性口内炎」、ウイルスが原因で起こる「ウイルス性口内炎」などです。
口内炎の原因
口内炎が発生する原因は複数あり、注意すべきポイントは患者さんによって変わります。口内炎の発症理由を5つ詳しく解説していきます。
唇や頬の内側を噛んでしまった
唇や頬の内側を噛むと、その部分の傷に細菌が感染し、口内炎になる可能性があります。また、歯磨き方法が乱暴だったり、矯正装置やサイズの合わない入れ歯が粘膜に触れた場合にも、粘膜を傷つけるリスクがあります。傷口への感染は口内炎の原因にもなるため、注意が必要です。
過労やストレス
過労、ストレス、睡眠不足、風邪などの病気によって免疫力が低下すると、感染症になりやすくなります。感染症に罹患すると口内炎になる可能性が高まります。
ストレスは口内炎の発症率を高めると考えられているため、口内炎と密接にかかわっています。
偏った食事
偏った食生活を送っていると、皮膚や粘膜に炎症が発生しやすくなるため、口内炎のリスクが上昇することにつながります。
ビタミンB2や鉄分の不足は口内炎のリスクを高めると考えられているため、栄養不足の人は食生活の改善やサプリメントを摂取し、栄養バランスの改善を図ったほうがいいかもしれません。
お口の中の不衛生
お口の中が不衛生だと、口腔内に細菌が繁殖しやすくなります。細菌増加は口内炎の発症にも直結するため、可能な限りお口の中を清潔に保つことが大切です。
また、お口の中が乾燥すると、細菌繁殖を防ぐ役割を持つ唾液の分泌量が低下するため、口内炎を予防するためには水分補給を忘れないことも重要です。
体質的なもの
口内炎の発症確率は、患者さんの体質によっても変わります。特定の飲食物の摂取で口内炎になるアレルギーを持つ人もいるため、自分の体質を事前に把握することで、自分に危険な飲食物を避け、口内炎の発症率の低下につなげることができます。
口内炎に歯医者のレーザー治療は効かない?
口内炎の治療にレーザーを用いると、症状の改善が可能です。レーザー照射で口内炎の痛みを和らげ、炎症を抑えて殺菌するなど、複数のメリットがあり、口内炎に有効な治療手段の一つです。
ただし、口内炎のレーザー治療は全ての歯科医院で受けられるわけではないため、歯科医院に足を運ぶ前に、レーザー治療に対応しているかをあらかじめ調べておく必要がある点に注意しましょう。
口内炎のレーザー治療の料金|公的医療保険適用になる?
口内炎に対するレーザー治療には保険が適用されますが、歯科医院は保険適用の機器を使用する必要があります。具体的な治療費の相場としては、保険適用内であれば、安い場合は1,000円未満、高い場合であっても4,000円程度が目安です。
保険適用外でも安い場合は2,000円程度で治療を受けることができますが、場合によっては1万円以上が必要になることもあります。
2025年3月 株式会社メディカルネット調べ
口内炎以外でレーザー治療が行われる場面
レーザー治療は口内炎だけではなく、歯科医院のさまざまな治療で活用されています。レーザー治療が大きな効果を発揮する具体的な例として、以下の5つがあります。
①虫歯治療
虫歯部分にレーザーを照射することで、その部分を蒸散させ削っていくことができます。虫歯の周囲や歯の深部に影響を与える可能性が低く、痛みや振動もほぼ生じないため、患者さんの負担が非常に小さい点が特徴です。
加えて、歯ブラシの届きにくい位置にある虫歯に対して、レーザーであれば対処が可能になる点も大きなメリットです。
治療の際に歯を削りすぎる心配もないため、レーザーを用いた虫歯治療は、患者さんにとって非常に快適な治療法です。
②歯周病治療
歯周病が発生すると、歯肉の部分に細菌が感染して歯肉炎を起こし腫れたり、歯と歯肉の間に生じた「歯周ポケット」と呼ばれる部分に歯石が溜まります。従来の治療法ではメスで歯肉を切開するため、出血しやすい点が懸念材料でした。
しかし、レーザー治療であれば、出血を起こすことなく腫れた部分を切開・除去したり、歯周ポケットに溜まった歯石を取り除くことが容易になります。
レーザーには殺菌作用もあり、歯周病治療でも大きな効果が期待できます。
③歯茎の整形
レーザー治療は、歯茎の形を整える際にも有効です。メスを使って「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」と呼ばれる部分を切るなどをしていたため、出血を避けることが難しくなっていました。
その点、レーザー治療であれば出血を避けながらの切除が可能となるため、患者さんにかかる負担も大きく軽減されます。
ピンポイントで照射を行うことによって綺麗に形を整えることもできるため、お口の形を整える際にもレーザー治療は有効な手段となっています。
④知覚過敏の治療
知覚過敏とは、歯ブラシなどが特定の箇所に触れたり、水を飲んだりした際に、歯がしみる症状です。「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる、歯の神経につながる穴が開くことによって神経が刺激されることが、知覚過敏の原因と考えられています。
レーザー治療により歯の表面に薄い膜ができるため、その膜が象牙細管を塞ぐことにより、歯の神経への刺激を防いで知覚過敏の症状を緩和します。
⑤歯茎の黒ずみの除去
メラニンという色素の影響によって、歯茎が黒ずむことがあります。メラニンはタバコに多く含まれ、喫煙習慣のある人は歯茎が黒ずみやすい傾向にあります。
加えて、口呼吸する癖があったり、歯磨きを行う際にブラッシングの圧が強すぎたりする人の場合も、メラミン色素を作り出し歯茎が黒ずむ可能性があります。
これまでの治療では、薬品を歯茎の表面に塗って黒ずみを取り除く手法を取っていましたが、レーザー治療であれば痛みを発生させることもなく、わずか数回の治療で黒ずみを除去できます。
治療回数を少なく抑えられるだけでなく、治療にかかる時間も短くできるため、レーザー治療は歯茎の色味を改善するうえでも大きなメリットがあります。
まとめ
口内炎ができたときに歯医者で行われるレーザー治療により、口内炎の痛みなどの症状改善と治癒の促進が期待できます。また、歯医者におけるレーザー治療は、虫歯治療、歯周病治療、知覚過敏の治療、歯茎の整形や黒ずみの除去といった用途でも使われており、さまざまな分野で高い効果が期待できる治療法です。
過労やストレス、偏った食事、お口の中の傷や不衛生といった要因が口内炎の発生につながるため、これらに心当たりのある人は注意が必要です。
レーザー治療は多くの歯科医院で導入されているものの、全ての歯科医院で受けられるわけではないため、訪れる予定の歯科医院でレーザー治療を受けられるかどうかは事前に確認しておきましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開