鏡を見て歯磨きをしているときに、歯の一部分がわずかに黒っぽくなっているのを見つけ、虫歯かもしれないと心配になっている方はいませんか。痛みがない場合、自分で虫歯かどうかも判断できません。
この記事では、初期段階の虫歯の症状をはじめ、発見方法や治し方などもご紹介します。
この記事の要約
・初期虫歯は、歯の表面が白濁としたり、歯の溝が黒くなったりします。
・鏡を見て発見することもできますが、早めに歯科医院を受診しましょう。
・初期虫歯の治し方は、正しい歯磨きやフッ素塗布などがあります。
・ご紹介する方法を実践し、虫歯予防に努めましょう。
虫歯の初期段階とは
初期段階の虫歯を「初期虫歯」といい、虫歯の進行度としては「CO(シーオー)」や「C1(シーワン)」に分類されます。まだ痛みなどの自覚症状がなく、患者さん自身で虫歯を発見することが難しい状態です。
<虫歯の進行度 CO〜C4>
CO:エナメル質が溶けて歯の表面が白濁としていますが、まだ歯に穴はあいておらず、痛みなどの自覚症状はありません。
C1:エナメル質に達した虫歯です。歯の表面に黒っぽい小さな穴がみられることがあります。
C2:エナメル質の内側の象牙質にまで虫歯が達した状態です。歯が痛んだりしみたりする自覚症状が出てきます。
C3:歯髄(神経)にまで達した虫歯です。何もしていなくても激しい痛みを感じることがあります。
C4:歯冠がほとんど失われ、多くは抜歯が必要となります。
虫歯ができる仕組み
虫歯の直接的な原因は、細菌(プラーク)です。プラークが産出した酸によって、歯の表面のカルシウムやミネラル成分が溶け出します。これを「脱灰」といいます。そして、溶け出したカルシウムが再び歯に取り込まれる現象が「再石灰化」です。
お口の中では脱灰と再石灰化が繰り返されます。そのバランスが崩れて脱灰が優勢になったときに虫歯になります。
初期虫歯の所見や症状
初期虫歯にみられる所見や症状は以下のとおりです。
歯の表面に不透明で白い部分がある
歯の表面を覆うエナメル質は、正常な場合に透明感のある白色をしています。一方で、初期虫歯になっている場合、不透明な白い部分がみられます。歯と歯茎の間が白くなるケースも少なくありません。
歯の溝が黒くなっている
C1の虫歯の場合、奥歯の咬む面の溝が黒くなっている場合があります。ただし、単に汚れが付着しているだけの可能性もあるため、歯科医師による検査・診断を受けることが大切です。
初期虫歯の発見方法
初期虫歯の発見方法として、患者さん自身で見つける場合と、歯科医院の受診で見つかる場合の2つがあります。
鏡で歯をよく見る
初期虫歯は痛みなどの自覚症状がほぼないため、患者さん自身で発見することが難しいといえます。しかしながら、丁寧に歯磨きをした後などに、鏡で歯をよく見ることで虫歯を発見できる場合があります。歯の表面が白っぽくなっていたり、歯の溝が黒っぽくなっている場合は、初期虫歯かもしれません。
早めに歯科医院を受診する
虫歯かもしれないと感じるようであれば、早めに歯科医院を受診してチェックしましょう。もしも放置して痛みが出てしまった場合には、虫歯が大きくなっていて治療の負担が増えてしまいます。
定期検診に通っていれば、患者さん自身がまったく気づいていない初期虫歯の兆候を発見してもらうことも可能です。歯の健康を守るために定期検診に行きましょう。
初期虫歯の治し方
初期虫歯は適切な処置やケアで改善が見込めるため、歯科医院でも歯を削る治療が必要ないと判断されることがあります。初期虫歯の治し方や進行予防法は以下のとおりです。
正しい歯磨き
毎日正しい歯磨きをしてプラークを取り除けば、再石灰化が促され歯を削らず虫歯が治る可能性があります。
歯と歯の間や、歯と歯茎の間のプラークを除去することを意識して磨きましょう。歯ブラシを小刻みに動かし、1本〜2本ずつ丁寧に磨きます。また、歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを活用することも大切です。
フッ素塗布
フッ素には、歯の再石灰化を促し、歯質を強化してくれる働きがあります。そのため、歯の表面にフッ素を塗布する処置も有効です。フッ素塗布は歯科医院で受けられる処置で、費用の目安は1回500円〜3,000円です。
2024年9月 株式会社メディカルネット調べ
PMTC
PMTCとは、歯科医師や歯科衛生士といった専門家が行う歯石除去や歯の清掃のことです。専用の薬剤や器具を用いて、セルフケアでは落とし切れていない歯の汚れを徹底的に除去します。費用は歯科医院により異なり、目安は1回3,000円〜15,000円です。
2024年9月 株式会社メディカルネット調べ
シーラント
シーラントは、主に子ども向けの処置です。子どもの奥歯の溝には汚れが溜まりやすいため、歯が生えたらプラスチックの材料で溝を埋めてしまいます。シーラントにより汚れが溜まりにくくなり、歯磨きもしやすくなるため虫歯予防につながります。費用の目安は、歯1本あたり400円〜600円です。
2024年9月 株式会社メディカルネット調べ
初期虫歯を予防する方法
歯を守るためには、虫歯にならないように予防することが大切です。主な予防法をご紹介します。
正しい歯磨きを徹底する
正しく歯磨きをしているつもりでも、プラークが取除できていないことが多くあります。奥歯の溝や、歯と歯の間、歯茎に近い部分などに磨き残しが発生しやすいです。詰め物と天然歯の境目なども意識してきれいに磨きましょう。
また、正しい歯磨きを徹底するためには、歯科医院でブラッシング指導を受けることもおすすめです。歯磨きの癖や磨き残しが多い部分を指摘してもらえるほか、歯ブラシ・歯磨き粉の選び方などもアドバイスしてもらえます。
そのほか、歯磨きに関しては『電動歯ブラシの使い方ミスってない?正しい使い方とその効果』の記事もご覧ください。
よく噛んで食べる
よく噛むことは、唾液をたくさん出すことにつながります。唾液は、お口の中の細菌を減らしたり、細菌の出す酸を薄めて歯の奪回を抑制したりするほか、歯の再石灰化を促す役割もあります。
間食は時間を決めて楽しむ
だらだらと食べていると、お口の中では虫歯菌が酸が産出し続けてしまい、脱灰と再石灰化のバランスが崩れて虫歯になります。間食は回数と時間を決めて、適度に楽しみましょう。
砂糖の摂取量・摂取回数を減らす
砂糖は虫歯菌の栄養となり、虫歯菌が酸を産出する原因になります。そのため、砂糖の摂取量・摂取回数を減らすことは、虫歯予防に非常に効果的と考えられています。
定期検診を受ける
定期検診では、セルフケアでは取り除けない歯石などを除去してくれるほか、虫歯の有無もチェックしてくれます。初期段階で虫歯が発見できれば、歯を削らずに済むかもしれません。虫歯から歯を守るために、できれば3ヵ月に1回ほどの頻度で定期検診を受けましょう。
まとめ
虫歯の初期段階では、歯の表面が不透明な白色になったり、歯の溝が黒くなったりします。しかし、痛みなどの自覚症状はないため、自分では虫歯に気付きにくいです。
虫歯を予防するためには、正しい歯磨きの徹底や定期検診を欠かさないことなどが重要となります。虫歯かもしれないと思ったら、早めに歯科医院を受診しましょう。
この記事で、初期虫歯に関するあなたの疑問や不安が少しでも解消されたら幸いです。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開