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食べる力から認知症・寝たきりを変えよう

食べる力から認知症・寝たきりを変えよう|第37回日本顎咬合学会学術大会・総会 視察レポート

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2019年6月22日~23日にわたって開催された第37回日本顎咬合学会学術大会・総会の一般公開フォーラムⅡをレポートする企画第3弾。第2弾に続き、『「食べる力」は生きる力』をテーマにした講演の後半に行われた「認知症/寝たきりを変える食べる力」の様子を、内容を踏まえてご紹介します。


日本顎咬合学会が主催している本フォーラムは今回で2回目となり、事前に申し込めば誰でも参加することができます。


認知症とはなにか

認知症とはなにか

一般的に広く知られている「認知症」ですが、実は詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか。講演ではまず、この認知症について説明が行われました。


認知症は複数の種類が存在し、それぞれ進行度のレベルに分けられます。症状に気付くタイミングは人によって差異があり、早期に違和感を抱き自分で病院に掛かるケースもあれば、自分では中々気付けないケースもあります。
自分で中々気付くことができない場合は、周囲がいかに異変に気付いてあげられるかが重要だそうです。


■認知症の種類


 ・アルツハイマー型認知症 60~70%
  (特徴:関心事が変わる、過食または食欲減退など)

 ・血管性認知症 20%
  (特徴:易怒性、まだらな症状、歯周疾患・炎症など)

 ・レビー小体型認知症 10%
  (特徴:パーキンソン病、幻視、流延・嚥下困難など)
  
 ・前頭側頭型認知症 数%
  (特徴:非社会性、何事にも無頓着になる、言葉が出てこない、人との接触に無関心など)


認知症は「なったら終わり」ではない

認知症は知的レベルに問題がない時期に気付かずに放置してしまうと、様々な認知症を引き起こし、重度になると寝たきりになることがあります。しかし、認知症は「なったら終わり」ではなく「なってからが勝負」だといいます。それは、認知症は症状の進行を遅らせることができる特性を持つ、慢性的な疾患だからだそうです。
慢性的な疾患を完治することができないのであれば、それ以上悪くならないようにする。そうして長く付き合っていくことを講演では提示されていました。



噛み合わせの重要性

噛み合わせの重要性

認知症の症状を遅らせて長く付き合っていくための方法のひとつに、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上が挙げられました。QOLは「人生の内容の質」「社会的な生活の質」などと訳され、心や身体の健康・人間関係の構築・仕事や私生活の充実度など、様々な角度から幸福度が計られます。

認知症や寝たきりになると、このQOLに低下の影響が出てきます。それに伴って患者さん自身の病気や治療に向き合う気持ちも低下してしまう傾向にあるそうです。


そこでQOLを向上させるために医療現場で行われはじめているのが、「食べる力を回復する」取り組みです。食べるためには噛み合わせや口腔ケアを行う必要があります。
講演では、実際に入れ歯や歯科インプラントによって咀嚼機能を改善させたことで認知症と上手く付き合っていった患者さんの事象を動画を交えて伝えてくれました。


■噛める入れ歯が介護を救う?


今回の講演で事象として紹介された患者さんの多くは、入れ歯をされていました。病気を発症する前から歯科医院へ通ってきちんと入れ歯の手入れをされていた方や、食事はできないけど入れ歯はいらないという方など、患者さんのケースは様々です。


お口に合わなくなっていたり、汚れが付着してまった入れ歯は調整・洗浄します。口腔ケアを行ったことで、食べられなかったものが食べられるようになったときの患者さんの喜ぶ姿は印象的でした。


入れ歯を調整して食べものを噛んで飲み込めるようになると、もっと食べたいという意欲が沸き、さらには喋ったり身体を動かしたり身体的な運動の改善につながることもあるそうです。それがQOLの向上につながるのだということがよく分かりました。



美味しい食事で人生を楽しもう

美味しい食事で人生を楽しもう

食べる力をより引き出すには美味しい食事が欠かせません。「最後まで良い人生を送るための食事と医療の関わり」について、通常の食事から嚥下食(えんげしょく※)までを対象に、美味しく食べられる料理を研究し、提供する取り組みを行っている現役のフランス料理のシェフからお話を聞くことができました。


料理人の観点を取り入れた料理は味だけでなく、素材の産地や調理法、栄養価にもこだわっています。また、嚥下食では料理の喉越しを良くするための「とろみ剤」を使わずに素材の味、喉に通した後の余韻も大切にしていると話されていました。


実際に患者さんが料理を食したところ、その美味しさや口から食べる喜びが増し、生きる喜びを感じられる方も多いそうです。
美味しい食事をしたいという気持ちが患者さん自身の生きる喜びや楽しさに結びつくというのは、とても共感できる事例でした。

※人の呑み込みや咀嚼力の低下レベルに合わせて形態やとろみなどの調整を行った食事のこと


認知症は歯周病が原因?オーラルフレイルを予防しよう

認知症は歯周病が原因?オーラルフレイルを予防しよう

「オーラルフレイル」という言葉をご存知でしょうか。「オーラル(Oral)」は口腔、「フレイル(Frailty)」は虚弱を意味し、口腔機能が衰えることをいいます。お口の機能には、噛む・飲み込む・話すことなどを含みます。飲食物を口にしてむせる、食べこぼす、活舌が悪くなるなど、オーラルフレイルの兆候は老化のサインともいわれているようです。


講演の最後にはこのオーラルフレイルについて言及され、全身の健康を守るためにはまずお口の健康から見直すことが大切であるとして歯科医療の重要性を訴えていました。

話の中で特に驚いたのは、認知症の原因に歯周病があるということです。
さらに口腔ケアが重要である理由のひとつに誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の予防も挙げられ、口腔ケアができている人はできていない人に比べて誤嚥性肺炎の発症を3分の1に減らせるというデータも発表されていました。


そして、オーラルフレイルは国家・行政・自治体が真剣に対策に取り組み、科学的な根拠を積み重ねるために歯科と医科が連携することが重要であると締めくくっています。
フレイル予防を成功させるためには、何より一般市民である私たち一人ひとりが口腔の健康に対する意識を高めることも求められていると感じました。






視察レポートまとめ

本講演では、広いホールの座席をほぼ埋めるほどたくさんの人が聴衆されていました。この状況を見ただけでも、認知症と寝たきりが国難と言われているのをうかがい知ることができます。


講演に参加してみて、「認知症はかかったら終わりではない」という言葉は印象的で、認知症についての認識を改めさせられました。

最初は難しいテーマをどこまで理解できるのか不安もありましたが、はじまってみると歯科医師・介護・内科医・脳外科医・シェフなど、多職種にわたる専門分野に精通した方々が多様な切り口で分かりやすく話をしてくれました。講演中に会場中が笑いに包まれる場面もあり、とても濃く充実した時間を過ごすことができました。

様々な学会や団体による一般市民向けの講演は様々あり、実際に現場で医療の提供や介護サポートをしている方の専門的な話を聞ますので、気軽に参加してみてはいかがでしょうか。

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