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要介護から自立を支援する歯科医療 | 第37回日本顎咬合学会学術大会・総会 視察レポート

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2019年6月22日~23日にわたって開催された第37回日本顎咬合学会学術大会・総会の一般公開フォーラムⅡをレポートする企画第2弾。

今回は『「食べる力」は生きる力』をテーマにした講演、「自立支援歯科学-要介護高齢者の自立と咬合の回復-」の様子をご紹介します。
どんな話が聞けるのか?内容を踏まえてレポートします。


日本顎咬合学会が主催している本フォーラムは今回で2回目となり、事前に申し込めば誰でも参加することができます。

「自立支援歯科学」ってどんな学?

“自立支援歯科学”というと難しく聞こえますが、「介護が必要な方でも、噛み合わせの改善・お口のケアをきっかけに、再び自分で食事をしたり、歩けるようになったり、自分でできることを増やす支援をする」ものだそうです。


フォーラムの中では、「介護が必要な人でも、口腔内の状態に問題がなければ嚥下食(えんげしょく※)ではなく通常の食事を取ることができる。」「食事を通してリハビリを続ければ、また自分で食事をしたり歩けたりする可能性が広がる。」として、食事の大切さを話されていました。

※人の呑み込みや咀嚼力の低下レベルに合わせて形態やとろみなどの調整を行った食事のこと

なぜ日本が超高齢化社会なのか

講演は、日本が世界からみてどのくらいの高齢化社会であるかという話題からはじまりました。高齢とは65歳以上の人のことを指し、その人口の割合を高齢化率としています。

内閣府の調査によると日本の高齢化率は1970年に7%を超え、1994年には14%に達し、高齢社会に突入しました。その後も上昇し続けて2017年10月時点では27.7%にまで達しています。2019年現在では鈍化の兆候があるものの、依然として世界的に見てもとても高い水準です。


日本人の寿命が延びた主な要因として、もともと主食にしていた和食が健康につながる食材・調理法であったことと、医療の充実化があるそうです。しかし、平均寿命に対して人が健康でいられる寿命が短いともいわれており、介護を必要とする高齢者が多いというのも現状です。

寝たきりで終わらせない、自立支援

寝たきりで終わらせない、自立支援

講演の話題は日本における高齢化社会から、介護に続きます。

介護といっても人によって症状は様々ですが、例えば寝たきりになった場合、これまで自分でできていたことができなくなることで自由が失われてしまいます。さらに介護となれば患者本人だけでなく、家族やまわり人の環境にも大きな影響を与えます。


「医療の進歩で病気が治っても生活できなくなる医療とは何か」。この疑問定義から、もう一度自分で食事をしたり歩いたり、なんでもできるようにすることを目指しているのが「自立支援歯科学」なのだそうです。

フードテストでわかる「噛める」大切さ

フードテストでわかる「噛める」大切さ

講演では動画を交えて実際に治療やリハビリを受けている方々の様子を紹介してくれました。

自立を目指す取り組みでは、リハビリに入る前にまずフードテストで噛み合わせをチェックします。

フードテストの方法は患者さんにピーナッツやリンゴを食べてもらうというものです。ここで大切なのは、「しっかり食べ物を噛めているか」「舌を使って食べ物を塊にしてまとめられているか」「問題なく呑み込めているか」だそうです。


実際にテストを行った方々は小さいピーナッツや硬いリンゴを噛むのに苦労されていました。入れ歯の再調整などで噛み合わせを整えてから再度テストを行うと、その反応から驚くほど食べ物を噛みやすくなっているのが分かります。簡単なテストですが、いかに噛み合わせが大事であるかを認識することができました。

リハビリのモチベーションは、食べたいメニューから

リハビリのモチベーションは、食べたいメニューから

本格的なリハビリで用いられるのは、なんと通常の食事です。

介護では嚥下食など、喉越しに配慮された柔らかい食事かペースト状の食事を用いられる場合がよくあります。しかし、講演では「口腔内に問題がなければ、自分で食べることができなくても通常の食事を取ることができる」と、力強く話されていました。

この時に大切なのが「患者本人が今食べたいもの」を用意することだそうです。そうすることでリハビリへのモチベーションを高めることができるそうで、その様子も動画で見ることができました。



リハビリを続けて食事がスムーズにとれるようになると、患者さんの表情が柔らかくなり、笑顔が顕著に増えてきました。講演に登壇されている方のお話の中には、歩行訓練に意欲が沸いたり、おしゃれを楽しむようになったり、様々な形で前向きな行動も増えていったという報告もありました。



「好きなものを自分で食べられるようになる」ことが、お口や体の機能回復を促すだけでなく、患者さん自身の心にも大きな変化を生んでいることがとても印象に残ります。

多職種連携で広がる介護の可能性

多職種連携で広がる介護の可能性

要介護から自立を目指す治療・リハビリを行うのにあたって特徴的なのは、介護の現場に歯科医療が参入していることです。
この日の講演でも、実際に現場に携わっている歯科医師・介護福祉士・言語聴覚士(ST)など様々な職種の方が登壇されていました。

医療範囲に関しては、全身の機能改善には口腔ケアが必要ということで、医科と歯科が連携することが大切だそうです。

また、介護・医療に直接関わる従事者だけでなく、患者さんの心に寄り添うために美味しい食事を作る調理師も大きな存在です。


講演では、こうして多岐にわたる職種の方がいかに連携できるか、その重要性も伝えていました。

視察レポートまとめ

自立支援歯科学についてお話を聞いてみて、「歯の噛み合わせ」がどうして大切だと言われているのかがよく分かりました。そして、介護についての考え方が少し変わりました。


介護について、もし寝たきりになってしまったら、麻痺が起こってしまったら、自分では何もできないというイメージを持っていました。でも、あきらめない道がある。これは、いま現在介護をしている人、されている人だけでなく、いまは介護が必要ない人にとっても必要な情報が詰まっているのではないでしょうか。

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